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診療科・部門

泌尿器科



診療科の特徴

泌尿器科部長 永田 仁夫

泌尿器科は腎臓、尿管、膀胱、前立腺などの尿路および陰茎、精巣を対象とし、そこに起こる良性、悪性疾患の両方を取り扱うとともに頻尿、排尿困難などの機能性疾患を扱う診療範囲が多岐にわたる科です。スタッフは4名で外来診療、検査、さらには良性悪性疾患における手術や薬物療法、悪性疾患に対する抗がん剤治療なども行っております。日々の生活にとって切り離せない排尿という行為を扱っており、普段は気にしていなくてもひとたび困窮すればQOLが著しく低下する領域であると考えます。
教育面では浜松医科大学に出向し学生講義をおこない、泌尿器疾患に対する講義を行っています。スタッフについても積極的に学会に参加・発表を行うことにより最新の知識を診療に還元するべく切磋琢磨しています。

診療の特徴

外来診療について:泌尿器科は尿道および腎盂カテーテル交換、膀胱鏡、腹部超音波検査、残尿測定、尿流量測定など外来にて行う処置および検査が非常に多岐にわたります。外来受診患者数は1日平均30人程度であり、そのうち他科および他院からの紹介初診患者が6-10人程度です。新たな紹介患者が多数紹介されてくることもあり、状態の安定した患者様は地域の開業医に連携の上紹介させていただいております。

入院診療について:主治医制をとってはいますが少人数の科であることを生かし、ほぼ毎日すべての患者様について診療方針を協議しチーム医療を行っております。

対象疾患

腎臓の病気
腎癌・腎良性腫瘍
腎結石
腎盂腎炎
腎後性腎不全
腎外傷
膀胱の疾患
膀胱癌
神経因性膀胱
尿閉
過活動膀胱
膀胱憩室
膀胱炎
尿管の疾患
尿管癌
尿管結石
尿管狭窄
前立腺の疾患
前立腺癌
前立腺肥大症
精巣の疾患
精巣悪性腫瘍
精巣捻転

前立腺癌

前立腺癌の診断は、前立腺に針を刺して組織を採取する検査(針生検)をして確定します。PSA検査の普及により針生検をお勧めする機会が増えていますが、当院では外来での経直腸8本生検もしくは短期入院での経直腸14本生検を基本に対応しており、患者さんの状況、ご希望を考慮して選択しています。治療は、前立腺全摘術、放射線治療、内分泌治療などがあり、がんの悪性度、進行状況、年齢、ご希望など合わせて相談の上、決定します。放射線治療については強度変調放射線治療(IMRT)の導入により、手術と比較しても遜色ない治療効果が期待できます。進行がんに対しては内分泌治療が中心となりますが、近年新規の治療薬が承認され選択肢が増えています。ドセタキセル・カバジタキセルなどの抗がん剤治療は、できる限り通院で継続できるよう調整します。
2020年度よりロボット手術を導入し、現在順調に治療をおこなっております。

ロボット支援前立腺全摘除術について

ロボット支援前立腺全摘除術は早期の前立腺がんに行われる手術治療です。
従来の開腹術に比べ出血量が少なく、傷も小さいため、低侵襲で行うことが可能です。
具体的にはお腹の複数箇所の1cm~2cm程度の傷からロボットの鉗子を挿入し手術を行います。このため従来の開腹手術にくらべ傷も小さく済みます。また視野を保つために炭酸ガスを利用して気腹を行い手術を行いますが、この気腹により常時圧迫止血されている状態となり、出血量を抑えることが可能となります。

詳細は、こちらからご覧ください。

腎癌

腎臓は背中両側にある握りこぶし大の臓器で体の水分やミネラルの調整・尿毒素の排出などを行っている臓器です。血尿などが主な症状ですが、近年では画像診断の発達によって他疾患にて撮影したCTなどから偶然発見される症例が増えています。腎癌の標準治療は手術であり、大きさ・場所・合併症などにより部分切除もしくは全摘除が行われます。
開腹術・腹腔鏡下手術を経て現在ではロボット支援手術へ移行しています。
当院でも2024年度よりロボット支援腎摘除術手術の導入を開始しました。部分切除術については技術的に難しく出血等の合併症の問題もあるため他院に紹介を行っています。
再発や手術困難な方には分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤などによって治療を行っています。

腎盂尿管癌

腎臓は背中両側にある臓器で尿の生成を行っている臓器です。つくられた尿はまず腎盂に集められ、その後に尿管を通って膀胱に流れ込みます。
腎盂尿管癌はこれらの部位に発生した癌です。治療の基本は手術を基本としますが術前に化学療法を行った方が後の再発の危険が少ない事が示され、現在では化学療法を行ってから手術が一般的になっています。
腎盂は腎臓に分離不可能な状態で結合しており、また腎盂尿管癌は飛び石様に存在するため、手術としては腎・腎盂・尿管のすべてを摘除する形となります。術式は開腹術・腹腔鏡下手術を経て現在ではロボット支援手術へ移行しています。
当院でも2024年度よりロボット支援腎摘除術手術の導入を開始しました。
再発や手術困難な方には抗がん剤や免疫チェックポイント阻害剤などによって治療を行っています。

膀胱癌

血尿のため受診して発見されることがほとんどでしたが、CT、エコーなどの検査で偶然発見されるケースが増加しています。治療は、尿道から内視鏡を挿入して癌を切除する経尿道的切除術(TUR-BT)を行います。当院ではオリンパス株式会社のTURisシステム®に加えリチャードウルフ社の切除鏡を導入し電解質溶液を使用することにより手術の安全性を高めています。さらに2023年6月より光力学診断(PDD)を用いたTUR-BTを導入することにより診断効率をあげ、より安全で再発の少ない治療をめざしております。
切除した結果により追加治療が必要になる場合があり、筋層浸潤がんでは膀胱全摘術を含めた治療方針の検討が必要となります。化学放射線療法などを施行して、膀胱機能を温存できる場合もあります。

光力学診断(Photodynamic Diagnosis: PDD)を用いた経尿道的膀胱腫瘍切除術について

TUR-BT後の膀胱がんの膀胱内再発率は高く、40-50%と言われております。この高い再発率を改善するために近年光力学診断(PDD)を用いたTUR-Btの有効性が示され保険適応となりました。

詳細は、こちらからご覧ください。

尿管結石

発作時の激しい痛みが特徴ですが、多くは保存的治療(鎮痛、排石促進)をしつつ、自然排石が期待できます。排石困難な場合は、結石の位置、大きさなどにより体外衝撃波結石破砕(ESWL)と経尿道的尿路結石砕石術(TUL)のどちらがより良い適応かを判断し施行します。当院では2016年4月よりレーザー砕石装置を2016年度より導入し、現在も毎年30-45例程度の症例を手術しております。ESWLについては2021年度より再開をしております。日帰りでも治療が可能ですが適応もあるため、患者様の状態に合わせて相談しながら治療法を決定させていただいています。

前立腺肥大症

前立腺が肥大すると排尿困難、頻尿などの症状を呈します。良性疾患ではありますが、進行すると腎機能に悪影響があり、尿がまったく出なくなる尿閉状態となることもあります。薬物療法で症状の改善が期待できますが、効果が不十分な場合には、5-7日程度の入院で経尿道的前立腺切除術(TUR-P)を施行します。TUR-Btと同様にオリンパス株式会社のTURisシステム®を導入し電解質溶液を使用することにより手術の安全性を高めています。また近年高齢であったりリスクの高い患者に対し前立腺水蒸気治療が保険適応になりました。当院では静岡県内ではいち早く2023年6月6日より施行しております。

REZUM™による前立腺水蒸気治療(Water Vapor Energy Therapy: WAVE治療)について

前立腺水蒸気治療は水蒸気を前立腺に注入することにより前立腺肥大症を治療します。「低侵襲」「短時間」「異物が体内に残らない」という特徴があり、治療効果についても尿勢改善は従来のTUR-Pに比べ軽度劣るものの、自覚症状の改善効果は高い。また効果の持続も5年間の調査で証明されており、再手術率も2-4%と低いことも示されています。

詳細は、こちらからご覧ください。

尿路感染症

膀胱炎、急性腎盂炎、急性前立腺炎など、さまざまな程度の細菌感染が起こります。軽症では短期の抗生剤内服治療でよくなりますが、特に結石や腫瘍による尿管閉塞を伴った腎盂炎では、しばしば敗血症を起こして重症となります。経尿道的尿管ステント留置もしくは腎瘻造設術を施行して尿管閉塞を解除することが必要となることがあり、時期を逸せずに適切な治療を施行します。

高齢化に伴ってさまざま泌尿器症状でお困りの方が増えている一方、併存疾患や年齢によって治療選択が限られる場合もあり、本人およびご家族のご希望をふまえて、それぞれの方に最もあった治療を相談していきたいと存じます。

医師紹介

永田 仁夫(ながた まさお)

科部長 兼 臨床研究管理センター臨床研究管理室長
専門分野
泌尿器科一般
尿路結石症
資格等
医学博士
浜松医科大学非常勤講師
日本泌尿器科学会/日本専門医機構 専門医
日本泌尿器科学会指導医
日本尿路結石症学会評議員
日本癌治療認定医機構がん治療認定医
がん診療にかかわる医師に対する緩和ケア研修会受講
Certificate of da Vinci console surgeon
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター(RARP)
Phisicians Training requirements on Rezum System受講
Ra223安全講習会受講
難病指定医(泌尿器科・ペルオキシゾーム病・原発性高シュウ酸尿症)
身体障害者福祉法第15条第1項に規定する診断医師(ぼうこう機能障害)
略歴
卒業大学名:浜松医科大学
免許取得年:平成9年

秋 亮太(あき りょうた)

副医長
専門分野
泌尿器一般
資格等
日本泌尿器科学会/日本専門医機構 専門医
がん診療にかかわる医師に対する緩和ケア研修会受講
Certificate of da Vinci console surgeon
日本泌尿器科学会/日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会 泌尿器ロボット支援手術プロクター(RARP)
Phisicians Training requirements on Rezum System受講
略歴
卒業大学名:藤田医科大学
免許取得年:平成26年

児玉 尭(こだま たかし)

医員
専門分野
泌尿器一般
資格等
日本泌尿器科学会/日本泌尿器科内視鏡学会公認泌尿器科腹腔鏡教育プログラム受講
厚生労働省指定オンライン診療研修修了
厚生労働省指定緊急避妊薬の処方にかかわるオンライン診療修了
Certificate of da Vinci Technology Training as a Console Surgeon
略歴
卒業大学名:近畿大学
免許取得年:平成30年

横山 昌史(よこやま まさし)

医師
専門分野
泌尿器一般
資格等
Certificate of da Vinci Technology Training as a First Assistant
略歴
卒業大学名:浜松医科大学
免許取得年:令和3年

週間予定

午前 外来
(永田・秋)
外来
(担当医)
手術
外来
(児玉・横山)
外来
(永田・秋)
手術
(児玉・横山)
外来
(児玉・横山)
午後 外来
(永田・秋)
前立腺生検
(外来)
ESWL
放射線検査
手術 手術 手術 外来
(児玉・横山)
前立腺生検
(外来・入院)
放射線検査

手術実績

部位 手術名 2021年 2022年 2023年
副腎 腹腔鏡下副腎摘除術 3 5
腎臓 腎摘除術 根治的腎摘除術 2 1
腹腔鏡下腎摘除術 1 1
単純腎摘除術 1 1 1
腎尿管全摘除 腎尿管全摘除 2 3 2
腹腔鏡下腎尿管全摘除 3 2 2
経皮的腎瘻増設術 5 2 6
尿管 結石砕石 TUL 30 43 60
PNL
ESWL 24
膀胱結石砕石術 5 14
尿管ステント留置 52 35 72
尿管鏡 2 10 7
経尿道的尿管狭窄拡張術 1 1
尿管修復術 1
膀胱 膀胱腫瘍 TUR-Bt 75 70 38
TUR-Bt(光力学診断) 38
経尿道的電気凝固術 3 4 8
膀胱全摘除(回腸導管) 1
膀胱全摘除(尿管皮膚瘻) 1
膀胱部分切除 1
膀胱水圧拡張術 2
膀胱瘻増設術 2 1 2
前立腺 ロボット支援前立腺全摘除術 19 22 33
TUR-P(電解質利用) 3 8 2
前立腺水蒸気治療(WAVE) 22
前立腺生検(手術室) 20 34 55
尿道・陰茎 尿道狭窄内視鏡手術 1 5 2
陰茎切断術
環状切除術 1 2 2
精巣・陰嚢 高位精巣摘除 1 5 6
精巣摘除術(前立腺癌) 2 1
精巣摘除術(その他) 3 1
精巣捻転手術 1 3 5
精巣上体摘出術 2
陰嚢水腫手術 5 3 2
後腹膜腫瘍摘除術 1 1

放射線治療実績

部位 手術名 2021年 2022年 2023年
前立腺 IMRT 21 37

施設認定

日本泌尿器科学会専門医教育施設 拠点教育施設

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