超音波内視鏡検査
1. 超音波内視鏡検査とは
超音波内視鏡(EUS: Endoscopic Ultrasonography)は、先端に超音波(エコー)装置のついた内視鏡を用いて、消化管のなかから消化管壁や周囲の臓器(膵臓、胆管、胆嚢など)、血管、リンパ節などを観察する検査です。通常の腹部エコー検査と比べ、胃や腸の中の空気や脂肪、骨がエコーの妨げになることが少なく、対象物のより近くから観察を行うため、詳細な情報を得ることができます。当院では主に膵臓、胆道、上部消化管(胃、食道、十二指腸)の病気に対する精密検査として行っています。
EUS専用の内視鏡にはカメラの周囲360°を観察できるラジアル型(左)と、カメラと平行な平面の観察ができるコンベックス型(右)があります。コンベックス型ではエコーで描出した病変を針で刺すことができるため、組織(細胞)検査やドレナージ治療(貯留した液体を消化管へ排出させる治療)にも使用されます。
2. 超音波内視鏡を利用した組織(細胞)検査
EUSを用いることにより、従来では組織採取が困難であった部位の病変に対して、エコーガイド下に針を刺して組織や細胞を採取すること(超音波内視鏡下穿刺 EUS-FNA: Endoscopic Ultrasound-guided Fine Needle Aspiration)が可能となりました。膵臓の病変や粘膜下腫瘍、リンパ節、腹腔内腫瘍、縦隔内腫瘍、腹水などが対象となります。当院では、
①化学療法前の病理学的確定診断
②画像検査のみでは診断が困難な腫瘍の鑑別
③癌の病期診断
を主な目的とし、検査が安全に実施可能である場合に検査を行っています。また検査には入院が必要です。
①化学療法前の病理学的確定診断
②画像検査のみでは診断が困難な腫瘍の鑑別
③癌の病期診断
を主な目的とし、検査が安全に実施可能である場合に検査を行っています。また検査には入院が必要です。
当科で行ったEUS-FNAの症例です。
腹部CTで胃の近くに腫大したリンパ節を認めました(上段)。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行いましたが胃内には腫瘍がみられず、肺癌の術後再発が疑われたため、EUS-FNAを行いました。超音波内視鏡でリンパ節を描出し(下段左)、針で穿刺して組織や細胞を採取しました(下段右)。病理検査によって、肺癌のリンパ節転移と診断されました。
腹部CTで胃の近くに腫大したリンパ節を認めました(上段)。上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を行いましたが胃内には腫瘍がみられず、肺癌の術後再発が疑われたため、EUS-FNAを行いました。超音波内視鏡でリンパ節を描出し(下段左)、針で穿刺して組織や細胞を採取しました(下段右)。病理検査によって、肺癌のリンパ節転移と診断されました。
3. 超音波内視鏡を利用した治療
①超音波内視鏡下嚢胞ドレナージ
EUS-CD: Endoscopic Ultrasound-guided Cyst Drainage
急性膵炎の合併症として、膵臓の周囲に膵液や液状化した壊死物質などが貯留することがあります。これらに細菌が感染した場合、適切な治療がなされなければ難治性の感染症となって死に至る恐れがあるため、通常、EUSを用いたドレナージ治療を行います。
当科でEUS-CDを行った症例です。
重症急性膵炎の治療中に高熱がみられるようになり、膵臓の前面に貯留していた液体に細菌が感染した疑いがありました(上段)。下段は超音波内視鏡で観察した画像です。貯留した液体の内部には壊死物質と思われる構造物が確認されました。
重症急性膵炎の治療中に高熱がみられるようになり、膵臓の前面に貯留していた液体に細菌が感染した疑いがありました(上段)。下段は超音波内視鏡で観察した画像です。貯留した液体の内部には壊死物質と思われる構造物が確認されました。
EUSを用いて胃内から感染した貯留物を穿刺(上段)し、胃内へ膿を排出するためのステントを挿入しました(下段)。以前はプラスチック製のステントを使用していましたが、最近では専用の金属ステントを用いて治療を行っています。
ドレナージ治療から約3ヶ月後のCT検査(右)で、膵前面の液体貯留は完全に消失していました。
②超音波内視鏡下胆道ドレナージ
EUS-BD: Endoscopic Ultrasound-guided Biliary Drainage
腫瘍や結石などにより胆管が閉塞すると、胆汁が十二指腸へ流れなくなって胆管が拡張し、黄疸を生じます(閉塞性黄疸)。閉塞性黄疸は放置すると胆管炎や肝不全の原因となるため、胆汁の流れを改善させる治療(胆道ドレナージ)が必要です。通常は内視鏡的膵胆管造影(ERCP)によるステント留置が試みられますが、胃切除術後や消化管狭窄などERCPが困難である場合があります。そのような患者さんに対する治療として、EUS-FNAの手技を応用した超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)が開発され、その有用性が報告されています。
EUS-BDは消化管内から胆管を穿刺してステントを留置します。どこから胆管を穿刺するかによって、胃から肝内胆管へステントを留置するEUS-HGS: Endoscopic Ultrasound-guided Hepaticogastrostomy(上段)と、十二指腸から総胆管へステントを留置するEUS-CDS: Endoscopic Ultrasound-guided Choledochoduodenostomy(下段)とに分けられます。当院では、ERCPでの胆道ドレナージが困難な患者さんを対象としてEUS-BDを行っています。
膵臓癌により十二指腸が閉塞し、ERCPが困難であったためEUS-HGSを行った症例です。
超音波内視鏡で胆管を穿刺し(上段左)、胆管造影を行いました(上段右)。胃と肝内胆管をつなぐように金属ステントを留置しました(下段)。
超音波内視鏡で胆管を穿刺し(上段左)、胆管造影を行いました(上段右)。胃と肝内胆管をつなぐように金属ステントを留置しました(下段)。