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感染症について

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浜松医療センターでは衛生管理室が院内感染対策を担当しています。院内の感染症に関するすべての情報は衛生管理室に収集され、解析され、予防や治療に役立てています。しかし、感染予防は病院の中のみで実践することはできません。社会全体が正しい知識を持っていて、適切な予防策をおこなうことが大切です。

今回、市民の皆様に感染症についての情報を逐次提示することにしました。これらの情報が皆様の健康に役立つことを期待したいと思います。香港型とかソ連型とかいわれているヒトインフルエンザおよび、現在流行している中東呼吸器症候群(MERS)についてお話します。

中東呼吸器症候群(MERS)について

 

現在、サウジアラビアおよびその周辺国、韓国においても中東呼吸器症候群(MERS)が発生しています。国内において中東呼吸器症候群(MERS)は、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律で規定する二類感染症であるため、特定、第一種及び第二種感染症指定医療機関への入院が必要です。まずは最寄りの保健所へご相談ください。ご自身でも発熱患者問診フローチャートに則りMERS感染を疑うか否かについて確認することができます。

フローチャートはコチラをご覧ください

ヒトインフルエンザについて

インフルエンザという名前

殆ど方々は「インフルエンザ」という名前を子供の頃から知っていることと思います。しかし、この名前の由来について知っている方は少ないのではないでしょうか?

「インフルエンザ」の名前は、十四世紀から十五世紀のイタリアのルネッサンス時代に、星占いによってこの疫病が 「星の影響(インフルエンス)によるものだ。」 とされていたことと、十七世紀のイギリスでも星から吹き付けられてくる 「突風(フルー)によるものだ。」 と考えられていたことに由来します。日本では 「インフルエンザ」 という言葉が一般的ですが、米国では 「フルー」 という言葉を人々は使用しています。

このように、名前の由来を考えるとき、昔の人は既にインフルエンザを普通の風邪と違った概念でとらえていたといえます。

インフルエンザウイルスの種類

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染して発症する病気ですが、このウイルスはA型、B型、C型の3種類に大別されます。A型はヒトと、ヒト以外のトリなどの動物にも存在しますが、B型やC型はヒトでのみ確認されています。

このなかでいわゆるインフルエンザを引き起こすのがインフルエンザA型とB型です。特に、インフルエンザA型が大変重要なウイルスなのです。香港型とかアジア型とかソ連型とか耳にしますが、これらはすべてA型です。現在問題となっているトリインフルエンザや今後発生することを恐れている新型インフルエンザもA型なのです。

1918年、「スペインかぜ」というインフルエンザが世界中に蔓延し、全世界で200万人から4,000万人の人々が死亡しました。日本でも全人口の3分の1が感染し、10万人ほどが死亡しました。このスペインかぜのウイルスは現在のソ連型の祖先なのです。

1957年になると、「アジアかぜ」 といわれるインフルエンザの大流行がみられ、1976年には「香港かぜ」と呼ばれるインフルエンザウイルスが出現し、多くの高齢者が死亡しました。この香港型ウイルスは現在でも流行しています。

興味深いのは1977年から流行したソ連かぜです。このウイルスは1950年に流行したスペインかぜの子孫と全く同じウイルスだったのです。シベリアの凍土で凍結されていたウイルスが地球温暖化によって溶けだしてきたのではないかという話や、研究室から漏れてきたのではないかという話もあります。

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インフルエンザの潜伏期

インフルエンザはインフルエンザウイルスに感染している人がくしゃみや咳をすることによって、または人と会話をすることによって、飛沫(水分を含んだ小さな粒子)が口や鼻から飛び出し、それを吸い込むことによって体内に侵入します。侵入したウイルスは上気道(喉と肺の入り口の間の管)の粘膜に付着し、約20分で細胞の中に入り込みます。

インフルエンザの潜伏期(感染してから症状が現れるまでの期間)は極めて短いことが知られています。最短16時間から最長5日で、2〜3日がもっとも多い潜伏期間といわれています。ウイルスの増殖速度が極めて早いことが潜伏期間を短くしているようです。

実際、1つのウイルスが感染すると8時間後には100個に増殖し、16時間後には一万個に、24時間後には百万個にまで増加します。このような急激な増殖のため、インフルエンザは感染後早期に発症してしまうのです。この潜伏期の短いことがインフルエンザが地域で急速に流行する理由であると言われています。

地域でインフルエンザが流行した場合には患者数は急速に増えますが、その後減少してゆき、3〜4週間で終息します。そのため近隣でインフルエンザが流行していましたら、3〜4週間は注意が必要です。

インフルエンザの症状

1.諸症状

インフルエンザはくしゃみ、鼻水、喉のイガイガ感に始まり、急に発熱します。

このとき、頭痛、腰痛、筋肉痛などの痛みに加えて全身倦怠感がみられます。インフルエンザは咳などの呼吸器症状に比べて倦怠感などの全身症状が早くから始まり、その症状が強いことが特徴です。主婦では、「腰が抜けるように痛くて台所仕事ができない。」と訴えることが多く見られます。

熱は1〜2日で38〜39度にまで上昇しますが、3日目に少し下降し、4〜5日目に再び上昇します。このような発熱のパターンは特に小児に多いと言われています。その後は次第に解熱し、約1週間で治癒しますが、咳や全身倦怠感が続くこともあります。人によっては眼が充血したり、咽頭が赤くなったりします。

インフルエンザは感染してから3日目が最も感染力が強いことが知られています。インフルエンザにかかった当初は発熱と関節痛が強いのですが、時間の経過とともに咳がでてきます。そして、3日目には頻回の咳とともに飛沫を周囲に飛び散らすので、この頃がもっとも感染力が強い時期なのです。

2.合併症

肺炎

インフルエンザの合併症についてですが、重要な疾患に肺炎があります。しかし、この肺炎の原因はインフルエンザウイルス自身ではありません。肺炎を直接引き起こすのは肺炎球菌などの細菌なのです。インフルエンザウイルスは肺炎のきっかけをつくるに過ぎません。

インフルエンザウイルスに感染すると、気管などの粘膜の表面にある繊毛上皮細胞がダメージを受けます。この繊毛上皮細胞というのは表面に繊毛というたくさんの毛があり、これが気道表面に付着した細菌などの病原体を上へ上へと押しやって、排出する働きを持っています。

しかし、インフルエンザウイルスによって障害をうけた繊毛上皮細胞はこれらの病原体を十分に上方に移動させることができません。そのため、排出されるべきものが気道に残ってしまい肺炎を合併してしまうのです。特に、慢性気管支炎や肺気腫などの呼吸器の病気をもっている高齢者では肺炎の合併によって死の転帰をとることがあります。

毎年、冬になると老人ホームなどで高齢者が死亡したなどとの新聞記事がみられるように、特に高齢者においてはインフルエンザ対策が重要です。

神経合併症

もう一つ恐ろしい合併症に神経合併症があります。これも、毎年冬になると新聞でよく報道されますが、インフルエンザによる小児死亡に大きく関係する合併症です。

この合併症には脳炎や脳症による死亡が多くみられます。インフルエンザ脳炎・脳症はインフルエンザA型、B型ともにみられ、小児に多いことが知られています。

この合併症はインフルエンザ罹患3〜14日後に発熱、頭痛、意識障害、痙攣などによって発症します。脳症・脳炎は比較的稀なのですが、いったん発症すると重症化し、死亡率も高いのです。一度、発症すると10〜40%の人が死亡し、20〜30%に神経の後遺症が残ってしまいます。結局、問題なく軽快するのは30〜50%といわれています。また、インフルエンザの症状としての発熱がみられてから脳炎・脳症の症状がでるまでの期間が短い人ほど予後が悪いことが知られています。

このようにインフルエンザには肺炎や脳炎・脳症などの重篤な合併症があり、他のもいろいろな合併症(血小板減少性紫斑病や心筋炎、時には突然死)があるので、インフルエンザ予防は重要な感染対策です。

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インフルエンザ薬

現在、日本で使用できるインフルエンザ薬にはタミフル、リレンザ、シンメトレルの3つがあります。

タミフルとリレンザはノイラミニダーゼ阻害剤という種類の薬であり、タミフルは内服薬、リレンザは吸入薬です。ノイラミニダーゼ阻害剤はインフルエンザA型でもB型にでも効果があるのですが、シンメトレルという古くからある薬はA型にしか効果はありません。

いずれにしても、これらの薬剤は症状が出てから48時間以内に服用しなければ効果が不十分になってしまいますので、診療所には早めに受診してください。

タミフルは発売開始後4年以上を経過しており、既に1000万人の方々が使用しています。精神症状などの様々な副作用が報告されてきていますが、すべての薬剤には何らかの副作用があるという前提で対応する必要があります。副作用が全くない薬はありません。そのため、タミフルを含めて、薬を使用する場合には、その有効性と安全性を考慮して判断するようにしてください。

インフルエンザワクチン

注射の回数

インフルエンザワクチンは秋に1ヶ月間隔で2回接種していましたが、最近は1回接種でも十分であることが知られてきました。1回接種と2回接種では抗体(抵抗力を示す蛋白のこと)の量に差が見られないことが明らかになったからです。但し、小児では1回接種では抗体が不十分になるので、2回接種をお勧めします。

インフルエンザワクチンの製造についてですが、これには次の冬に流行するインフルエンザウイルスを正確に予測して、そのウイルスに対するワクチンを生産しなくてはなりません。予測をする方法は次の手順に従って行っています。

  1. 日本の流行の常に1年先を行く中国にウイルスの観測地点を設けて流行ウイルスを予測します。
  2. ウイルスの遺伝子情報を解読し、ウイルスが進化する方向を予測します。
  3. 日本で4〜6月頃に散発的に流行するウイルスをチェックします。
  4. 世界保健機関(WHO)からの流行ウイルス予測を参考にします。

これらの方法によって流行ウイルスを正確に予測するのです。予測した後には孵化した鶏卵を用いてワクチンを生産します。この孵化鶏卵が確保できないとワクチンはできません。

実際に流行ウイルスが予測されてからワクチンができあがるまで数ヶ月必要です。その理由は下記の如くです。

  1. 最初に孵化鶏卵を発注します。発注後から卵が入手されるまで3週間必要です。
  2. 卵を入荷してからウイルスを接種してワクチン原液を製造します。4週間を要します。
  3. ここで原液に有効ワクチンが含まれているか試験します。2週間必要です。
  4. 注射瓶にワクチンを充填します。1週間必要です。
  5. 製造試験という販売の前に必要な試験を施行します。4週間を要します。
  6. 国家検定を合格させます。6週間必要です。

このように結局、孵化鶏卵を発注してから国家検定が終了するまで約4ヶ月半を要してしまいます。

インフルエンザワクチンの注射をしてから抵抗力がつくまで約2週間必要です。そして、効果は約4ヶ月持続します。

そのため、ワクチンを接種する時期が大変重要となります。余り早く注射してしまうと、まだインフルエンザが流行している頃に効果がなくなってしまう可能性がありますし、流行の真っ最中に注射しても効果が出てくる前にインフルエンザウイルスに感染してしまうかもしれません。

インフルエンザワクチンは1回接種で十分効果があるので、適切な注射の時期は11月下旬〜12月上旬といえるでしょう。12月上旬に注射すれば、12月中旬から下旬には効果がでてきます。そして、効果は流行時期を十分カバーしてくれますので、安心です。もし、従来通りの2回接種を希望されるならば、11月下旬に1回目を行い、2回目は1ヶ月後の12月下旬に接種してください。

また、抵抗力の低下している人と同居している家族や密接に接触する友人はインフルエンザワクチンを接種して感染源とならないようにして下さい。インフルエンザワクチンを接種し、友人や家族にウイルスを感染させないように努力するとともに、自分も感染から守りましょう。

腎臓移植や抗癌治療を受けた方々のような抵抗力が低下した人には是非ともインフルエンザワクチンを接種していただきたいと思います。このような方々は抵抗力が少ないので、ワクチンを接種しても抗体の上昇は不十分です。そのため、インフルエンザに罹患することはあります。

しかし、重症化や死亡の予防効果はかなり期待できるのです。例えば、高齢者ではインフルエンザワクチンによるインフルエンザの予防効果は40%ほどしかありませんが、重症化への予防効果は60%あり、死亡への予防効果は80%もあるのです。80%というのは、ワクチンを接種しなかった高齢の方々が10人死亡した場合、ワクチンさえ接種していれば8人は死亡せずに済んだという意味です。

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